医療費というのは明細書をもらえるわけでもないので何にいくらかかっているのかわかりづらいですよね。ものを買うときには最近ではインターネットで値段の比較を行っている人は多いと思います。私もいろいろなものをインターネットを使って購入していますがいろいろなサイトで値段やや品質のチェックを行っています。医療に関しては値段ばかりでなく質の問題がありますので医療内容の比較は簡単ではありません。
ただ、どれだけかかるのかは治療を受ける前にある程度知っておきたいものです。
ここでは、下肢静脈瘤の治療に実際いくらかかるのかということを書いてみます。
まず下肢静脈瘤の保険診療が認められるのは、
手術手技料として
抜去術 10万2000円
高位結紮術3万1300円
硬化療法 1万7200円
の3つのみです。
手技料という名前ですが、この中に手術の中で使う材料費(手術機材、縫合糸など)がすべて含まれています。もし治療が入院もせず日帰りで行われたならばこれらの1割ないし3割の自己負担金(抜去術で約1万円から3万円程度)を支払えばよいことになります。これに弾力ストッキングなどを購入することがありますから実際の自己負担はもう少し増えます(プラス約一万円)。 現時点では日本は国民皆保険で、全国どこで治療を受けても手技が同じであれば治療費は基本的には同じことになります。(医師の腕や病院の質によって治療の値段が変わったりはしないのです。治療方法がいろいろ行われることはありますが、保険診療の範囲で行われている以上、治療費は同じ治療に対しては同じ治療費となります。でも実際は病院によって治療費は大きく違います。同じ治療を行っても治療費が違ってくるのは不思議な感じがします。
それではどうして治療費が病院によって違うのでしょう?それは入院費ということが大きく関係してきます。
 入院すれば1日あたり1万円から3万円(病院によって違います)ぐらい多くかかることになります(ちなみにアメリカでは1日10万円以上)。当然入院日数が長くなればなるほど入院費は高額になります。入院期間が長くなると入院費のほうが、手術手技料を大きく超えてしまっている場合も少なくありません。私が読んだ静脈瘤の本には静脈瘤の治療は一週間の入院で片足で約40万円かかると書かれていました。
 ところで静脈瘤の手術で一体どれぐらいの入院が必要なのでしょうか?全身麻酔をかけて静脈瘤の手術を行っても1泊2日せいぜい2泊3日ぐらいあれば十分だと思います。それ以上の入院は基本的には不必要でしょう。よく抜糸まで入院が必要というのは医学的に全く根拠がありません。そもそも埋没縫合という方法で皮膚を閉じれば抜糸の必要もありませんし、シャワーも翌日に浴びることができます。静脈瘤の術後で問題があるとすれば肺塞栓(エコノミークラス症候群)です。これは肺に血栓が詰まって命に関わったりする怖い合併症ですが、注意して行えば1000例に1例もおこらないものです。手術直後から弾力ストッキングをはいて歩行を積極的に行うことにより予防可能ですし、入院しているからといって発生頻度が減るものでもないのです。むしろ入院してベット上で安静にしている場合におこりやすいともいえます。
エンドレーザー治療の費用
 
 さてエンドレーザー治療は最新治療であるために現時点では保健診療ではないので自費診療となる訳ですが、日本では保健診療と自費診療を同時に行うことは禁止されています(混合医療の禁止)そのためエンドレーザー治療にかかる費用がすべて自費になります。私たちのところではエンドレーザー治療の手技料は現在15万円です。それ以外に手術前の検査(本来は保険でカバーされている血液検査や全身の検査などすべて)が約3万円かかります。
 
 現在、混合医療解禁に向けていろいろな議論がなされています。混合医療を認めると確かに医療の均一性は保つことが困難になるのかもしれません。でも、現在の日本の医療保険制度は既に破綻しているといえ、これ以上の新らしい負担は保険で行うことは困難でしょう。新しい治療法は日々開発されています。これからは新しい治療を受けるためにはある程度の混合医療導入が必要不可欠と思われます。そもそも日本では患者さんの自己負担を既にいただいている以上、すでに混合医療みたいな制度にみえます。日本では保険診療は現物支給ということになっているのですが、実際は負担金(2割とか3割とか)を会計にていただいています。このことは保険診療が現物支給であることをわかりづらくしている原因の一つだと思います
 私の住んでいたカナダは日本と似た保険制度でしたが、保険料はきわめて安く自己負担も0!でした。帰るときに会計を待つ必要がないのです。これには正直驚きました。いったいどうなってるのでしょう?そのかわり病院やクリニックの数は多くなく専門医の数も驚くほど少なくなっています。私が長い間専門としてきた心臓血管外科の分野も人が少なく、例えば小児の心臓外科医と言われる人はカナダ全体で約15人という少なさです(ちなみに人口は日本の約4分の1ですから、単純に日本で計算すると60人程度ということになります。)日本では実際何人いるのかはっきりわかりませんが、この10倍以上存在していることのではないでしょうか。心臓外科医がたくさんいるとどこでも治療を受けられて便利じゃないと思う方もいるでしょう。でもよく考えてください。外科医の数が多いと一人あたりの手術数は当然少なくなります。特に心臓手術になると非常に複雑ですので常に手術を行っていないとなかなかうまくできません。また手術は手術場以外で練習することができないため例えて言うと、練習もせずに代打でバッターボックスへ立つようなものです。コンスタントな治療成績を挙げることは困難でしょう。日本でなかなかよい外科医がでないのは個人の資質の問題というより専門医師養成のシステムそのものに問題があると考えて間違いありません。欧米では専門医の数が入り口で厳しく制限されており、その結果治療の質が高く保たれている構造なのです。日本では専門医は入り口では制限されず乱造されているために、治療の質が保てないのです。日本人は器用ですから、基本的に手術は上手です。野球で大リーグレベルの選手になるより手術で大リーグクラスになることの方が日本人にはむいているでしょう。専門医の数を適正に制限し治療のレベルをグローバルスタンダードへ上げることが望まれます。そうすることで日本においても安心して治療を受けることができるようになると思います。
べノネット 足の静脈瘤相談室
http://www.k3.dion.ne.jp/~venonet/
ベノネット血管クリニック http://www.venonet.jp