妊娠により下肢静脈瘤が発生することがあり、妊娠と下肢静脈瘤とは密接な関係にあります。一般的には妊娠の5-40%に下肢静脈瘤が発生するといわれています。日本では2175名の妊婦さんへのアンケートの結果、静脈瘤ができなかったのは83.6% 、できた方が4.3%でした。又静脈瘤に気づかなかった方は12.6%もいたので静脈瘤の実際の頻度はもう少し高いのかもしれません。
妊娠中に下肢静脈瘤ができやすい理由としては
1) 妊娠子宮が増大し骨盤内の静脈を圧迫するため下肢の静脈の流れが悪くなる
2) 女性ホルモンの影響により血管が拡張しやすくなる
などが指摘されています。
妊娠を維持するため、いろいろなホルモンが働いています。そのホルモンの中には血管壁を弛緩させる働きがあり、その結果、血管が拡張しやすくなります。また妊娠後期には子宮が大きくなり、腹部の静脈を圧迫することにより足の静脈血が流れにくくなり、足の静脈圧が上昇し(正常の約3倍)、静脈の拡張が起きることになります。この状態が慢性的に続くと静脈瘤をおこしてしまうこうとがあります。
下肢静脈瘤の発生時期
妊娠3ヶ月までに下肢静脈瘤の約70%が発生すると言われています。足の症状が悪くなって妊娠に気づく場合もあります。多くは出産後3-4ヶ月で自然に消失していきますが、妊娠回数と共に静脈瘤が残っていく可能性が高くなります。一般的には第2子、第3子と出産回数が増えると共に静脈瘤が発生しやすくなります。
静脈瘤の症状
妊娠中の女性には、次のような足の症状がよく見られます。
疲労感
だるい
足が重い
足が張った
夜間のこむらがえり
足のむくみ
以上の症状がいくつかある場合、静脈瘤が発生している可能性があります。
また、このような症状は以下の場合に特に起きやすくなります。
家族に静脈瘤のかたがいる
妊娠前から静脈瘤がある
長時間の立ち仕事をしている
気温が高い(夏場)
妊娠中の静脈瘤の対処法
1 足の挙上
足を心臓から15-20cmほど挙げて休むと足の静脈の流れがよくなり、静脈瘤の症状軽減や予防につながります。
2 弾性ストッキングの着用
弾性ストッキングにはうっ血(足に血がたまる)予防効果があります。
また母体の血液循環に良い影響を与え、胎児にも同様の効果が期待されます。
血液が下肢静脈にたまらないと、その分全身に流れるので、他の器官に多くの血液が供給されることになります。早産傾向のある女性が早産予防のひとつとして圧迫ストッキングを着用したほうがよいと言えるかもしれません。これまでは、静脈瘤が母体、胎児に与える影響についてはほとんど注意が払われていませんでした。最近の研究によると下肢静脈瘤は妊娠中の女性の健康を損なうだけではありません。妊娠中の長時間の立ち仕事は早産しやすいといわれていますが、静脈逆流がある場合、長時間立ち続けていることにより静脈うっ血と循環血液量の減少を招き、胎児にも悪い影響を与える可能性が示唆されます。
なお静脈瘤の予防や治療のためには、女性ホルモンの影響がなくなる出産後6週までは弾性ストッキングを着用していた方がよいと思われます。
3体重のコントロール
妊娠中は適正体重を維持することが大切です。そのことで、静脈圧の上昇を防ぎ、静脈瘤の発生を予防できます。
妊娠中に発生する静脈瘤は出産後には軽快することが多いので、静脈機能を大切にして妊娠中を過ごスことが大切です。
参考文献
妊娠時の下肢のトラブル 改善のための方法 シグバリス
妊娠産褥期と下肢静脈瘤
下肢静脈瘤ハンドブック 診断治療の最前線 下肢静脈瘤硬化療法研究会
日帰りレーザー治療
こうち静脈ケアクリニック https://www.venonet.jp