下肢静脈の解剖
これは下肢静脈瘤の治療を受ける際に理解しておく必要があります。静脈瘤の原因がどこにあるかということは治療を行ううえで極めて重要だからです。
アルケア 下肢静脈瘤 原因と治療より(平井正文先生のご好意による)
上の図で静脈というのは大きく分けて表在(体表に近い)ものと深部(体の奥深くあるもの)表在と深部をつなげるものの3種類があります。表在静脈には大伏在静脈といって足首から太ももの内側を通って太ももの付け根までつながっているものと、小伏在静脈といってふくらはぎの後ろにある静脈の2種類があります。静脈というのは体の中で老廃物の溜まった血液を足の先から心臓に向かって返す通り道です。血液の流れとして正常の場合足先から頭の方に上向きに流れます。人間は二本足で立つので、立ったときに血液が下に向かって逆流しないように静脈のなかにはたくさんの逆流防止弁があります。この逆流防止弁は表在静脈、深部静脈のどちらにもありますが、このうち静脈瘤になるのは表在静脈の弁が壊れて逆流が生じたものが多いのです。表在静脈(大伏在静脈、小伏在静脈)の逆流が出ると長時間立てることで次第に下肢の静脈の負担が増えて拡張してきて、静脈の弱いところが静脈瘤になっていきます。すなわち表在静脈の逆流が静脈瘤になる原因となっています。交通枝に関しては、不全交通枝(深部から表在に対して静脈血が流れる)となっていて、静脈瘤の原因となっている場合があります。交通枝が大きい場合には直接切離や内視鏡を使って切離する方法(SEPS)といった方法を行うことがあります。
表在静脈に逆流のある場合、逆流のある静脈の範囲を超音波法などで同定し、静脈逆流を止める処置を行います。その方法としては、ストリッピング手術やエンドレーザー治療、高位結さつ術、硬化療法などです。静脈瘤の治療は静脈の逆流を治療せずに静脈瘤になっている静脈(コブ)を直接切除しても必ず再発します。静脈瘤の原因となっている静脈を十分に診断して治療を行うべきです。
深部静脈の逆流に対しては現時点ではあまり良い治療法はありません。機能がなくなった弁に対して弁形成を行ったり、静脈弁の移植なども行われいますが、治療成績は満足すべきものではありません。今後の新しい治療法の開発が望まれます。
こうち静脈ケアクリニック https://www.venonet.jp