下肢静脈瘤という病気のほかに足(脚)には様々な病気があります。
静脈瘤の診断治療する際には血管外科、整形外科、皮膚科、美容外科などの知識も非常に重要です。
ここでは代表的なものをいくつか説明していきます。
血管外科の病気
深部静脈血栓症
深いところにある静脈に血栓ができて、足が腫れる病気です。痛くて歩けなくなることがあり、特に運動開始時に痛みを伴う場合、静脈性破行と呼ばれます。
血栓がはがれて飛んで肺に詰まるといわゆるエコノミークラス症候群(肺塞栓)という命にかかわる病気となります。
この病気は長時間同じ姿勢でいる場合におこりやすくなります。
慢性閉塞性動脈硬化症
これは動脈(酸素の多い血液が流れる血管)が、動脈硬化を起こして血管の壁が厚くなり狭窄や閉塞していくのものです。
症状は足先の冷感やしびれ、歩くと足が痛くて歩けなくなり、少し休息をとると歩けるようになる間欠性跛行という状態になることがあります。この症状は脊柱管狭窄症でもでます。脊柱管狭窄症の場合は、中腰になると症状が強くなりがちですが、動脈硬化の場合は姿勢による症状の変化は一般的にありません。
高齢の男性に多い病気ですが、静脈瘤になりやすい年齢とも重なっているため両方が合併している方も見かけます。
足の動脈硬化に強いかたは弾性ストッキングをはくことができませんので、静脈瘤の治療(硬化療法、ストリッピング手術、レーザー治療など)を受けてはいけない場合があります。血管外科の専門医に診てもらうことが重要です。
なお足の血圧を測定することや超音波検査で簡単にスクリーニングができます。
足の動脈瘤
比較的まれですが、足の動脈にも瘤ができることがあり、動脈瘤と呼ばれます。静脈瘤と勘違いされることもありますが、全く違う病気です。動脈瘤が大きい場合は破裂したり、血栓症を起こしたりするので手術が必要です。
膝裏の痛みは膝裏の動脈瘤で生じることもあります。
リンパ浮腫
腹部の手術や放射線治療の後に足がむくむことがあります。深部静脈血栓症や静脈瘤と鑑別を要する場合がありますが、これまでの病気からリンパ浮腫の診断は簡単につくことが多いと思います。
整形外科の病気
ベーカー嚢腫
膝の裏の関節嚢に水がたまる病気です。非常によく診られる病気ですが、静脈瘤ではないかと心配され来院される方のなかにかなりいらっしゃいます。膝の裏が大きく腫れてきますが、通常は痛みなどはありません。
ベーカー嚢腫が破裂すると突然激痛が起こり足(膝から下)が広い範囲で腫れてきます。
症状は静脈に血栓ができる深部静脈血栓症とよく似ているため間違えられることがあります。基本的には安静で治癒しますが、ひどい場合は手術で嚢腫を取り出す必要があります。
変形性膝関節炎
変形性膝関節症というのは加齢とともに膝の関節が変形してくる病気です。
発症する年齢が静脈瘤にかかるかたに近いために、偶然合併している可能性もあります。
膝の関節が悪くなると十分な歩行ができないため、ふくらはぎの筋肉が弱り、足の静脈還流が悪くなり、静脈瘤の症状増悪に関係している可能性のもあります。
膝の悪くなっているかたや膝の関節の手術を受けた方で足のむくみが強い、足の色素沈着のあるなどの症状がある場合は静脈機能も低下していることがあります。皮膚科の病気
リベド血管炎という病気があります。
これは見た目が静脈瘤とよく似た血管の病気です。静脈瘤ではないでしょうか?と相談を受けることがあります。
皮膚の末梢循環が悪くなって、網目状に血管が出てきている病気です。リベドは、三つのタイプに分類されます。
【大理石様皮膚】 寒い時期に小児に多く見られ、成人女性にも見られます。寒冷によって血の流れが悪くなり、酸素含有量の少ない血液がうっ滞することで、網状構造が保たれたリベドになります。
【樹枝状皮斑(ひはん)】 網状構造が完全に閉鎖しておらず、所々で途切れて樹枝状の構造をしています。毛細血管や小静脈などの拡張、うっ滞だけでなく、いろいろな基礎疾患によって小動脈に炎症が生じた状態です。症状が進行すれば血管の器質的変化にも至り、上部皮膚の炎症や潰瘍になることもあります。
【網状皮斑】 大理石様皮膚と樹枝状皮斑の中間と考えられるタイプ。網状構造は完全に閉鎖されていますが、大理石様皮膚よりはリベドが持続的です。夏になって気温が上昇すると網目状が消失することもあります。
この疾患では、下肢に特徴的な網目状もしくは樹枝状の暗赤色斑(これはいわゆるクモの巣状静脈瘤に比べて色が濃く幅も広い)、紫斑(出血斑)、潰瘍などがみられ、激しい疼痛を伴うこともあります。夏に悪化し、冬に改善するものは、下肢静脈瘤によるうっ滞性皮膚炎でも夏場に悪くなる潰瘍ができるので鑑別が重要です。 リベドの診断は、特徴がある皮膚の状態や経過から比較的容易ですが、一人一人発症時期や症状の強さなどが異なります。リベドや潰瘍がみられるほかの疾患と鑑別するためには、皮膚の一部を取って顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)が有用です。また静脈疾患との鑑別をするためには、一度静脈機能の評価を受けてみることをお勧めします。
リベドの治療に関しては、この疾患の真の原因が不明なため対症療法が中心となります。血液凝固を予防する薬を内服しますが、ステロイドの併用もある程度効果があります。特に梅雨時期から夏にかけて、症状が出だしたら早めに内服を開始します。高温多湿を避け、比較的涼しい環境にすることも予防になります。
長時間の立ち仕事や足のむくみは悪化の原因となるため、圧迫力のある弾性ストッキングをはくのが効果的です。
その他の病気
脚むずむず症候群( レストレスレッグ症候群)
脚むずむず症候群とは足を虫がはっているような感じがして夜眠れないという症状が特徴的な症候群です。
経過が長くなるにつれて不眠の症状が強くなり疲労感が強くなっていきます。症状は両足あるいは足のある特定の部分に限定していますが、時には上肢に広がっていくことがあります。
脚むずむず症候群は乳幼児から発生することが知られていますが、中高年や老年期に最も強い症状が出現してきます。女性に男性より若干頻度が高いことが知られています。血液透析を受けている方に多いことも知られています。
脚むずむず症候群と下肢静脈瘤の症状には共通したものがあります。
実際に下肢静脈瘤を持っている患者さんのなかには静脈瘤を治療すると脚むずむず症候群の症状が改善するかたがいます。弾性ストッキングが静脈瘤の症状に有効であるように脚むずむず症候群に対しても弾性ストッキングが有効かどうかということについて現在研究が進められています。
定期的な歩行練習
ストレスをコントロールし、気温の急激な変化と過労を避ける
鉄欠乏性貧血、腎臓病、下肢静脈瘤のチェック
弾性ストッキングの使用について医師に相談
線維筋痛症
静脈瘤の痛みで来院されるかたのなかに足ばかりでなく全身的な痛みを訴えられる方がいますので、注意が必要です。
静脈瘤では足以外に痛みがでることはまずありません。
ネコひっかき病
ネコひっかき病という病気があります。ネコなどをかっているかたが、引っかかれた後しばらくして熱がでてリンパ節が腫れてくる病気です。
ソケイ部(太ももの付け根)が腫れると一見静脈炎のような症状となるので、静脈瘤と思われることもあるようです。
診断はよく病気の経過を聞き、エコーをすればリンパ節の腫脹が認められますので静脈炎との鑑別は簡単にできます。
ネコを飼っているかたはご注意ください。このほかにも様々な病気と鑑別診断が必要な場合があります。表面にある静脈瘤にばかり気をとられないことが重要です。
| 下肢静脈瘤に関係する足の病気について |
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